転職活動の応募フォームや面談で「現年収を教えてください」と聞かれたとき、記憶を頼りにおおよその数字を答えてしまう方は少なくありません。しかし、後から書面の内容と食い違うと、選考や条件提示の場で不要な誤解を招くことがあります。
結論は、現年収を記憶や概算で申告せず、源泉徴収票・給与明細・賞与明細等の書面から算出し、金額と根拠を対で示すことです。本記事では、年収交渉の進め方そのものではなく、現年収を正確に算出・記載する方法に絞って解説します。交渉の準備・進め方は年収交渉の進め方、給与明細の項目の見方は給与明細の見方で確認できます。
結論|現年収は記憶ではなく書面の根拠から算出する
「だいたい〇〇万円くらい」という記憶ベースの申告には、次のようなリスクがあります。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 賞与・手当の計上漏れ | 月給だけを思い出し、賞与や一時金を含め忘れる |
| 年による変動の見落とし | 繁忙期の残業が多かった年を基準にしてしまう |
| 書面との不一致 | 後日提出する源泉徴収票等と申告額がずれる |
こうしたリスクを避けるためには、記憶ではなく、実際に発行された書面から金額を拾い上げることが基本になります。
現年収の算出に使う書類
現年収の算出には、主に次の書類を使います。
| 書類 | 確認できる内容 |
|---|---|
| 源泉徴収票 | その年に支払が確定した給与等の総額(支払金額) |
| 給与明細(直近12か月分) | 月ごとの基本給、諸手当、時間外手当等の内訳 |
| 賞与明細 | 賞与・一時金として支給された金額と算定期間 |
源泉徴収票は、国税庁の手引きにおいて、その年中に支払の確定した給与等(諸手当・賞与を含む)の総額を示すものとされています。まずは源泉徴収票の総額を起点にし、給与明細・賞与明細で内訳を補足する進め方が分かりやすくなります。
現年収に含めるもの・含めないもの
現年収として扱ってよいかどうか迷いやすい項目を整理します。
| 項目 | 一般的な扱いの目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 基本給・諸手当・時間外手当 | 含める | 源泉徴収票・給与明細の支給額に基づく |
| 賞与・一時金 | 含める | 賞与明細の支給額に基づく |
| 通勤手当(非課税分) | 含めない場合が多い | 会社の規程・源泉徴収票の記載で確認 |
| 出張旅費・立替経費の精算 | 含めない | 実費精算であり報酬ではない |
| 現物給与(社宅等) | 会社・制度により扱いが異なる | 個別に確認が必要 |
判断に迷う項目は、自己判断で決めつけず、給与規程や経理担当への確認、必要に応じて税務の専門家への相談を検討します。
書面から現年収を算出する手順
- 直近の源泉徴収票を用意し、「支払金額」欄を確認する
- 給与明細12か月分をそろえ、月ごとの支給額を書き出す
- 賞与明細を確認し、年間に支給された賞与の合計額を書き出す
- 源泉徴収票の総額と、給与明細・賞与明細の合計が整合しているか確認する
- 通勤手当等、含めるか迷う項目を別欄に分けて記録する
前職・現職が年の途中で変わっている場合や、複数の勤務先がある場合は、それぞれの源泉徴収票を確認し、合算方法に迷う場合は税務・会計の専門家へ相談することも選択肢になります。
記入前のセルフチェック
職務経歴書・応募フォームへ記入する前、またはエージェントとの面談前に、次の点を確認します。
- [ ] 直近の源泉徴収票を確認したか
- [ ] 給与明細12か月分で月ごとの支給額を確認したか
- [ ] 賞与明細で年間の賞与合計を確認したか
- [ ] 通勤手当・立替経費等を含めていないか確認したか
- [ ] 記入する金額と、提示できる書面の金額が一致しているか
このチェックを行うことで、面談時に「具体的な根拠は何ですか」と聞かれても、書面を示しながら落ち着いて答えられるようになります。
金額と根拠を対で示す伝え方
現年収を伝える際は、金額だけでなく、その根拠となる書面もあわせて示せるようにしておくと、やり取りがスムーズになります。
| 伝え方の例 | 補足する根拠 |
|---|---|
| 「昨年の源泉徴収票の支払金額は〇〇円でした」 | 源泉徴収票 |
| 「月々の給与明細を合計すると、賞与を含めて〇〇円程度でした」 | 給与明細・賞与明細 |
| 「通勤手当を除いた金額でお伝えしています」 | 給与明細の内訳 |
これは、金額を大きく見せる、あるいは小さく見せるための工夫ではなく、事実を正確に伝えるための整理です。根拠を添えて伝えることで、選考側も内容を確認しやすくなります。
前職・複数勤務先がある場合の注意点
年の途中で転職している場合や、副業・複数の勤務先がある場合は、現年収の算出がやや複雑になります。次の点を押さえておくと、整理しやすくなります。
| 状況 | 確認のポイント |
|---|---|
| 年の途中で転職した | 前職・現職それぞれの源泉徴収票を確認し、合算するかどうかを整理する |
| 複数の勤務先がある | それぞれの源泉徴収票・給与明細を用意し、合計額と内訳を分けて記録する |
| 休職期間があった | 休職中の給与・傷病手当金等の扱いを、給与か給与以外かで区別する |
合算方法や扱いに迷う場合は、自己判断で決めつけず、税務・会計の専門家や、前職・現職の給与担当へ確認することをおすすめします。
面談・応募フォームでの伝え方の型
現年収を口頭やフォームで伝える際に迷いやすいのは、「単純に金額だけを言えばよいのか、内訳まで説明すべきか」という点です。次のような型を意識しておくと、状況に応じて使い分けやすくなります。
| 場面 | 伝え方の型 |
|---|---|
| 応募フォームの数値入力欄 | 源泉徴収票の支払金額をそのまま記入し、備考欄があれば「賞与含む」等を補足する |
| 面談での口頭説明 | 「昨年の源泉徴収票ベースで〇〇円、内訳は月給と賞与です」のように、金額と根拠をセットで話す |
| エージェント経由のやり取り | 書面のコピーや金額メモを事前に共有し、エージェントに確認・整理を依頼する |
いずれの場面でも、聞かれてから慌てて記憶を頼りに答えるのではなく、事前に書面を確認し、金額と根拠を整理しておくことが、落ち着いた対応につながります。
よくある疑問
Q. 現年収に「見込み」の賞与を含めてもよいですか。 A. 現年収は、原則として既に確定・支給された金額を基準にするのが基本です。今後支給予定の賞与を含めたい場合は、「昨年の実績額」と「今年度の見込み額」を分けて伝えると、誤解を避けやすくなります。
Q. 手取り額を現年収として伝えてしまってもよいですか。 A. 一般的に「年収」は税・社会保険料等を差し引く前の総支給額を指す場合が多く、手取り額とは異なります。どちらの金額を伝えているかを明示すると、選考側との認識のずれを防げます。
Q. 現年収を伝えたくない、または伝えにくい事情がある場合はどうすればよいですか。 A. 転職エージェントを利用している場合、直接ではなくエージェント経由で条件面のやり取りを進める方法もあります。伝え方に迷う場合は、まず相談してみることも一つの選択肢です。
Q. 現年収と現在の月給、どちらを優先して伝えるべきですか。 A. 応募フォームや面談で「年収」を尋ねられている場合は、年間の総支給額を基準に答えるのが基本です。月給のみを尋ねられている場合は、賞与を含めずに答え、賞与の有無・時期は別途補足すると誤解が生じにくくなります。
現年収の整理を意思決定に使う
現年収は、記憶やその場の印象で答えるものではなく、書面から積み上げて算出するものです。使う書類と手順を押さえておけば、応募書類や面談で聞かれたときも、根拠を持って落ち着いて答えられます。
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