第一種と第二種の衛生管理者免許は、試験の「難易度」だけで選ぶ資格ではありません。実務上の違いは、選任できる事業場の業種と試験範囲の2点に集約されます。第一種は全業種で選任可能で、試験は有害業務に係る範囲とそれ以外の両方を問います。第二種は有害業務との関連が少ない一定の業種に限られ、試験は有害業務に係る範囲を除きます。製造業や建設業などでは第二種免許だけでは選任できず、第二種保有者が第一種を受ける場合は特例第一種制度を利用できます。免許の取得と事業場での選任・届出は別段階であり、選任義務の50人基準は企業全体ではなく事業場単位です。
第一種と第二種の違いは、選任できる業種と試験範囲で決まる
第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の実務上の最大の違いは、選任可能な業種の範囲です。公益財団法人安全衛生技術試験協会は、第一種衛生管理者免許を有する者はすべての業種の事業場で衛生管理者になれる一方、第二種衛生管理者免許を有する者は有害業務と関連の少ない一定の業種の事業場においてのみ衛生管理者になれると説明しています。試験範囲の差は「有害業務に係る範囲」の有無にあります。
選任可能業種という軸での違い
安全衛生技術試験協会によると、第一種衛生管理者免許保有者はすべての業種の事業場で衛生管理者に選任できます。第二種衛生管理者免許保有者は、情報通信業、金融・保険業、卸売・小売業など、有害業務との関連が少ない一定の業種に限られます。協会のページでは業種を例示しており、正確な区分は事業場の業種ごとに定められた資格要件表で確認する必要があります。
試験範囲という軸での違い
試験範囲の差は「有害業務に係る範囲」を含むかどうかで分かれます。第一種は有害・非有害の両方を、第二種は有害を除く範囲を、特例第一種は有害範囲のみを問います。科目別の詳細は、後述の「試験範囲の違いは「有害業務に係る範囲」の有無」で整理しています。
第一種・第二種・特例第一種の比較表
| 区分 | 選任可能な業種 | 試験範囲(労働衛生・関係法令) | 労働生理 | 試験時間 |
|---|---|---|---|---|
| 第一種 | 全業種 | 有害業務に係る範囲とそれ以外の両方 | あり | 3時間(科目免除者は2時間15分) |
| 第二種 | 一定の業種のみ | 有害業務に係るものを除く | あり | 3時間(科目免除者は2時間15分) |
| 特例第一種 | 第一種取得後は全業種 | 有害業務に係る範囲のみ | なし | 2時間 |
第二種だけでは選任できない業種と、第二種で選任可能な業種の例
希望する業種では第一種が必要か、第二種で足りるかは、事業場の業種区分で判断します。東京労働局の衛生管理者に関するページの業種別資格要件表によると、農林水産業・鉱業・建設業・製造業・電気業・ガス業・水道業・熱供給業・運送業・自動車整備業・機械修理業・医療業・清掃業では、第二種免許だけでは選任できません。その他の業種では第一種・第二種いずれも選任可能ですが、第二種で選任できるのは有害業務との関連が少ない一定の業種に限られます。
第二種免許だけでは選任できない業種
次の業種の事業場では、第一種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許を有する者、または医師・歯科医師・労働衛生コンサルタント等が選任要件となり、第二種免許だけでは選任できません(東京労働局の資格要件表より)。
- 農林水産業
- 鉱業
- 建設業
- 製造業
- 電気業
- ガス業
- 水道業
- 熱供給業
- 運送業
- 自動車整備業
- 機械修理業
- 医療業
- 清掃業
製造業・建設業・医療業などを転職先に考えている場合は、第二種ではなく第一種(または特例第一種経由での第一種取得)を検討する必要があります。
第二種で選任可能な業種の例
安全衛生技術試験協会は、第二種で選任できる業種の例として、情報通信業、金融・保険業、卸売・小売業などを挙げています。これはあくまで例示であり、第二種で選任可能な業種の完全な一覧をここでは示しません。自分の希望業種が第二種で足りるかは、協会の例示と労働局の業種別資格要件表を照合して判断してください。
医師・歯科医師・労働衛生コンサルタント等も選任可能(境界)
第一種・第二種以外にも、事業場の業種に応じて医師・歯科医師・労働衛生コンサルタント等が衛生管理者に選任できる場合があります(東京労働局)。本記事の主題は第一種・第二種の比較です。衛生工学衛生管理者免許や保健師・薬剤師など、試験合格以外の選任資格については、別の制度として公式情報で確認してください。
試験範囲の違いは「有害業務に係る範囲」の有無
第一種・第二種・特例第一種の試験で何が違うのかを整理すると、労働衛生・関係法令の出題範囲が「有害業務に係るもの」を含むかどうかで分かれます。
第一種の試験範囲
第一種衛生管理者免許試験では、労働衛生・関係法令について有害業務に係る範囲とそれ以外の範囲の両方、および労働生理が出題されます(安全衛生技術試験協会)。試験科目表では、労働衛生・関係法令が有害/非有害に分割され、それぞれ出題数と配点が定められています。
第二種の試験範囲
第二種衛生管理者免許試験では、労働衛生・関係法令は有害業務に係るものを除く範囲が出題され、労働生理も問われます(安全衛生技術試験協会)。第一種と比べ、有害業務に関する労働衛生・関係法令の範囲が試験対象から外れます。
試験時間の違い
試験時間は次のとおりです(安全衛生技術試験協会)。
| 区分 | 試験時間 |
|---|---|
| 第一種・第二種 | 3時間(科目免除者は2時間15分) |
| 特例第一種 | 2時間 |
出題数・配点・試験時間は変更される可能性があるため、受験前には協会の最新ページで再確認してください。
第二種保有者が第一種を受験する場合は特例第一種制度
第二種衛生管理者免許を既に取得している場合、第一種衛生管理者免許試験を受けるときは特例第一種衛生管理者免許試験の制度を利用します。試験範囲は有害業務に係る労働衛生・関係法令のみとなり、第二種で既に合格済みの非有害範囲は対象外です。
特例第一種の試験範囲(第一種との差分)
特例第一種では、労働衛生・関係法令は有害業務に係るものに限って出題されます(安全衛生技術試験協会)。労働生理は出題されません。試験時間は2時間です。第二種で学習・合格した範囲に加えて、有害業務に係る範囲だけを受験する構造になっています。
申請時の記入・添付書類
安全衛生技術試験協会によると、特例第一種を受験する場合は次の手続が必要です。
- 申請書A欄の上に「特例」と赤字で記入する
- 第二種衛生管理者免許証の写しを添付する
- 受験資格を証する添付書類は不要(住所変更時は現住所を確認できる書類が必要)
合格基準の詳細は本記事の主題外です。申請前に協会の最新ページで確認してください。
免許を取得しても、自動的に事業場の衛生管理者にはならない
衛生管理者免許は試験合格等により取得する資格であり、事業場で衛生管理者として選任されることや、所轄の労働基準監督署への報告とは別の段階です。免許を持っていても、事業者が選任し届出を行うまでは、その事業場の衛生管理者にはなりません。
免許取得の流れ(受験申請〜合格〜免許取得)
衛生管理者免許は、衛生管理者免許試験(第一種・第二種)に合格した者等が受けます(安全衛生技術試験協会)。受験申請から合格後の免許取得までは、試験協会の手続に従う段階です。この段階では、まだ特定の事業場の衛生管理者としての選任は発生しません。
選任と監督署への報告
労働安全衛生法では、事業場を一つの適用単位として安全衛生管理者等の選任が義務付けられています(東京労働局)。総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医の選任は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に行い、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告する必要があります。衛生管理者は、免許保有者のうちから事業者が選任します。
保健師・薬剤師等は試験合格以外でも選任可能(境界)
東京労働局は、衛生管理者(第一種・第二種)のほか、衛生管理者免許試験に合格した者、保健師、薬剤師などが選任要件を満たす場合があるとしています。試験合格以外の資格で選任される経路もあるため、自分が受験する必要があるかは、取得済みの資格と希望業種を照合して判断してください。
選任義務の50人基準は事業場単位である
常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で、衛生管理者の選任が必要です。この基準は企業全体の従業員数ではなく、事業場単位で判断します。支社・店舗・工場ごとに労働者数が50人に達していれば、それぞれの事業場で選任義務が生じます。
事業場単位の適用と企業全体人数との違い
厚生労働省の資料では、衛生管理者の選任義務は業種区分(業種1・2・3)いずれにおいても常時50人以上とされています。東京労働局も、事業場を一つの適用単位として選任を義務付けると明記しています。転職先を検討するとき、本社の全従業員数だけで判断せず、自分が配属される事業場の労働者数を確認してください。
労働者数に応じた選任人数
労働者数に応じて選任する衛生管理者の人数は、次のとおりです(東京労働局)。
| 常時使用する労働者数 | 選任する衛生管理者の人数 |
|---|---|
| 50〜200人 | 1人 |
| 201〜500人 | 2人 |
| 501〜1,000人 | 3人 |
| 1,001〜2,000人 | 4人 |
| 2,001〜3,000人 | 5人 |
| 3,001人以上 | 6人 |
安全衛生技術試験協会も、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生管理者免許を有する者のうちから労働者数に応じた人数の衛生管理者を選任し、安全衛生業務のうち衛生に係わる技術的な事項を管理させることが必要だと説明しています。
自分に必要な免許区分を判断する手順
第一種と第二種のどちらを目指すかは、希望する事業場の業種と自分の受験資格から順に確認します。
ステップ1|希望する事業場の業種を特定する
転職先や受験後に就業したい職場を、事業場の業種で捉えます。同じ企業でも事業場ごとに業種区分が異なる場合があるため、配属予定の拠点・工場・店舗の業種を特定することが起点になります。
ステップ2|業種別資格要件表で第一種が必要か確認する
東京労働局の衛生管理者に関するページの業種別資格要件表で、自分の希望業種が第二種だけでは選任できない業種に該当するかを確認します。農林水産業・鉱業・建設業・製造業・電気業・ガス業・水道業・熱供給業・運送業・自動車整備業・機械修理業・医療業・清掃業に該当する場合は、第一種(または特例第一種経由での第一種取得)が必要です。
ステップ3|第二種で足りる業種か協会の例示で確認する
第一種が必須でない業種の場合、第二種で選任可能かを確認します。安全衛生技術試験協会の例示(情報通信・金融保険・卸売小売等)と、労働局の資格要件表を照合してください。第二種で選任可能な業種の正確な一覧を断定せず、例示と否定リストの両方で判断するのが安全です。
ステップ4|受験資格を協会の最新表で確認する
受験資格は学歴・労働衛生実務年数など複数の区分があります。代表例として、大学(短大を含む)または高等専門学校卒業後1年以上の労働衛生実務、高等学校または中等教育学校卒業後3年以上の労働衛生実務、10年以上の労働衛生実務などがあります(安全衛生技術試験協会)。個別の受験可否は協会の最新受験資格表と添付書類の要件で確認してください。区分の詳細は、衛生管理者の受験資格とは?学歴・実務年数の区分と公式表の照合手順(衛生管理者 受験資格)で扱います。
ステップ5|免許取得後の選任・届出を別途確認する
試験合格・免許取得後に、事業場での選任と監督署への届出が別途必要であることを忘れないでください。選任の人数基準や届出の詳細は、衛生管理者の選任基準(衛生管理者 選任 50人)で扱います。求人票に「衛生管理者」とだけ書かれている場合、第一種・第二種のどちらが求められるかは個別に確認が必要です。
よくある質問
第一種と第二種の違いは試験の難易度ですか?
主たる違いは選任できる業種と試験範囲です。第一種は全業種で選任でき、有害業務に係る範囲も含みます。第二種は有害業務との関連が少ない一定の業種に限られ、試験から有害業務に係る範囲を除きます。
製造業や医療業では第二種免許だけで衛生管理者になれますか?
なれません。東京労働局の資格要件表では、農林水産・製造・建設・運送・医療・清掃などでは第二種だけでは選任できません。希望業種は労働局の表と安全衛生技術試験協会の説明を照合してください。
第二種を持っていれば特例で第一種免許になりますか?
免許が自動で切り替わる制度ではありません。第二種保有者は特例第一種衛生管理者免許試験を受け、合格後に第一種免許を申請します。免許取得と事業場での選任・届出は別段階です。
申請前に確認する公式情報の一覧
受験申請や転職判断の前に、次の公式ページで最新情報を確認してください。一次情報の確認日は末尾の参照元を正とします。
安全衛生技術試験協会で確認する項目
安全衛生技術試験協会の衛生管理者紹介ページで、次の項目を確認できます。
- 第一種・第二種の選任可能業種の説明
- 試験科目・試験範囲・試験時間
- 特例第一種衛生管理者免許試験の制度と申請書類
- 受験資格の区分と必要書類
労働局・厚生労働省で確認する項目
- 東京労働局の衛生管理者に関するページ:業種別の資格要件、選任人数、選任・報告の手続
- 厚生労働省の選任義務に関する資料:事業場単位の50人基準
所轄の労働基準監督署や都道府県労働局のページも、地域の手続きを確認するときの参考になります。
確認日の記録と再確認の必要性
試験日程・手数料・合格率・出題傾向は本記事の主題外です。これらに触れる場合は、協会の最新ページと確認日を別途記録してください。法令改正や試験制度の変更により、選任要件や試験範囲が変わる可能性があるため、受験申請・転職判断の直前に公式情報を再確認することをおすすめします。
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参照元(一次情報)
情報確認日: 2026-08-24。本一覧は本文が根拠にした一次情報です。試験日程・手数料・様式・統計表は、利用前に各ページの最新版を再確認してください。
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